第六章 試練と光明

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 と思ったら、貯水塔の壁面に設けられた明り取りの窓をくぐり抜けた。  塔の中に入り込み、内側の壁にぶつかり、地面に落下する。  ボンボンボンと、体が床の上でゴムボールのように弾む。  バリアが残っていたお陰で怪我は免れた。  床に横たわる陸くんに駆け寄る。  何かに引っ掛かったのだろうか、レオタードの胸の部分が大きく裂て、肌が露になって いる。  同年代の男子の肌をこんなに近くで見るのは初めてだ。ちょっとばかり恥ずかしい。  などと言っては、いられない。  口元に耳を近づけ、呼吸を確かめる。大丈夫、息をしている。  首筋に指をあて、心拍を確かめる。こちらも大丈夫、心臓は動いている。 「陸くん、陸くん。起きて」と呼びかける。  うう。うーん。と反応する。気が付いた。  こういう時は、揺り動かしたりするのはダメなんだ。 「陸くん、陸くん」と呼びかけを続ける。
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