第六章 試練と光明

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 ハッと我に返り、見つめ合っていた恥ずかしさから、また別な話題を切り出す。 「そういえば、ネロは白変種だよね。虹彩が黒いもの」 「白変種?」 「メラニン色素の遺伝変異が原因じゃなくて白化した動物のこと。孔雀、梟、虎や蛇にも 居るわね」 「ふーん」 「陸くんは、さっき、ネロは望んで白く生まれたんじゃない、って言ったでしょ。でも、 白変種は、望まれて生まれてきてるのよ」 「望まれて?」 「氷河期に保護色となる白化の形質が遺伝子の中に組み込まれた。それが白変種なんだと 言われてる。だから、ネロはその形質を未来に伝えるために生まれてきたのよ」 「形質を……、伝えるため……」 「そう。きっと、全ての生き物は、何かの役割を果たす為に、生まれて来るんだと思う」  何かの役割を……果たすため。……何かの……役割を……。  陸くんが、私の言ったフレーズを繰り返す。  陸くんの目が潤んできた。感動しているんだ。  それほど、素晴らしい名言を吐いたつもりは無いのだが……。 「そうか……。そうだったのか……」  と陸くんが独り言ちる。次の瞬間、陸くんの頬を一筋の涙が伝う。
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