第四章 ソラシドレスキュー

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「さあ、行こう」陸くんの言葉に促され、配置に着く。  陸くんの後ろに立って、陸くんの腰に手を添える。 「最初にステルスモードオン」陸くんが号令をかける。  二人を包む空気のボールをイメージする。  そのボールの皮を内側と外側から押し潰すようなイメージを作る。  私達の周囲に陽炎が立った。ステルスモード完了だ。 「じゃあ、出発する」陸くんの声を合図に、空を見上げる。 「行くよ。3、2、1。ゴーッ」  空へ。心に強く念じる。  体の中に熱の渦が湧きおこる。体が軽くなる。  足が地面から離れる。  次の瞬間、私は空に飛びたつ。  全身が(ジー)を感じる。   学校の一階、二階、屋上を超え、校舎の向こうに町の俯瞰が見えて来る。  上昇するスピードがグングン上がる。  地上があっという間に遠ざかる。見下ろせば、シーちゃん達が芥子粒のようだ。  街並みが遥か下方に去り、地平線が一直線に見えてくる。  その地平線に意識を移すと、飛ぶ方向が徐々に変わり、水平飛行になる。  地平の向こうに意識を集中する。ギュイーンとスピードが上がる。 「10時の方向」  出発前に目的地をWebの地図で確認した。  そういうのは得意だ、という陸くんにナビを委ねる。ゆっくりと左に向きを変える。  眼下に広がる町並み、山や川が箱庭のように見える。  その景色が、次々に後方に飛び去って行く。 「怖くない?」と陸くんが聞いてきた。 「大丈夫。平気」と答える。  バリアのために、風圧にさらされる事もない。寒くもない。陸くんとも会話が出来る。  道路や鉄道、川を目印に飛ぶ。  晴れやかで清々しい気持ちだ。嬉しいと言っても良いくらい。  人命救助という使命を以って飛んでいるのだが、ウキウキと湧きたつような気分だ。  飛ぶって、こんなに楽しいんだ。まるで、空を飛んでるよう……って、何か変か?
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