第四章 ソラシドレスキュー

18/20
前へ
/221ページ
次へ
 救助現場の中州から上昇し、取材ヘリの追跡をまくために、帰る方向と逆方向に飛ぶ。  途中からステルスモードで身を隠し、帰投するコースに乗る。 「上手くいったね」 「初回にしては上出来だ」  陸くんと、そんな会話をしながら飛行を続ける。  正直、最初からこんなに上手く行くとは思っていなかった。  失敗もなく、全員救助することが出来た。私達が邪魔者扱いされたら、どうしようかと 思っていたけれど、それも無かった。きっと、先着のレスキュー隊が岸側に居たことで、 私達と干渉することが無かったのが、幸したのだろう。  ああ、良かった。  人助けが出来たことも嬉しいが、自分の力が役にたった事が嬉しい。  心がウキウキする。  嗚呼、鳥のように飛びたい気分。 「ねえ、宙返りしてみない」 「宙返り? やったことないでしょ。そんなの」 「やりたい気分なの。いくよ」 「わわ、待って」  陸くんの返事を待たずに、背中方向に意識を集中。  グングンと体が上昇。地平線が眼下に飛び去る。  視界の全部が青空になる。そのまま飛びつづける。  視界の上部に上下反転の地平線が現れる。今度は、視界の全部が地面になる。  再び、正面に地平線が現れる。 「凄い! 出来た! 気持ちいい!!」 「急にやるなよ」と陸くんが呆れる。  それに応える前に、笑いが飛び出した。  アハハ。アハハハハ。  生きてて良かった。超能力が使えるようになって良かったと。心の底から思う。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加