40人が本棚に入れています
本棚に追加
「陸くんも、協力してくれて有難う」
と陸くんの方に向き直ると、苦虫を噛み潰した顔とぶつかった。
「あの……、陸くん」
苦虫顔がますます苦くなる。
「なんか……、怒ってる?」
「怒ってはいないけど、これからの事を考えると憂鬱」
「これからの事?」
「さっきので、僕らは一遍に注目される存在になった。これから、膨大な数の救助要請が
来ることになるよ。僕らの手に余るくらいのね」
その懸念は最初から分かっている。だから、中洲での救助の時に残していったビラに、
注意書きをかいておいた。
『私達は超能力救助隊 ソラシドレスキューです。
危険が迫ったとき、SNSに#ソラシドレスキューで投稿頂ければ救助に向かいます。
場所と状況を詳しく書いてください。
それと、私達はまだ学生です。救助活動が出来る時間は限られています。本当に緊急の
場合だけ、出動要請してください』
ビラの内容をもう一度陸くんに説明する。
「それは、分かってるよ。でもね、世の中の人が全員、このビラの内容通り行動するとは
限らない。嘘や悪戯で救助要請されても僕達には分からない。これからの方が間違いなく
大変になるっていう事さ」
陸くんの言葉が胸に刺さる。
そんな訳で、ソラシドレスキューの最初の出動は嬉しさ半分、不安半分の結果になった
のである。
最初のコメントを投稿しよう!