第五章 恍惚と不安

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 翌日から、ソラシドレスキューは大忙しになった。  朝9時に部室に登校した時点で、七ツも救助要請が来ていた。  その中から対応可能な物を選んで、救助に向かう。  巨大仏像の清掃作業中に、風に煽られて宙吊りになっている。  ボートが沖合に流されて漂流している。  落石に前後を挟まれ、自動車が身動き取れない。  一日に二度三度と出動すると、流石に疲れてくる。  でも、助けた人達から感謝されれば嬉しいし、励みになる。  陸くんも私達四人といるときには、ソラシドレスキューに批判的な言動をするけれど、 救助の現場では率先して行動してくれている。やっぱり、陸くんは良い人なんだ。そんな 風に思う。  次の日以降も、ソラシドレスキューへの救助要請は続く。  ロープウェイが故障して動かなくなった。  山道の事故で自動車が崖からはみ出し、人が取り残されている。  電柱に登った子猫が、降りられなくなっている。こんな可愛い救助要請もある。  忙しくも、楽しい日々が続く。  陸くんも、不平を言わずに救助活動に参加してくれている。  マスコミやネットの一部で、トリック扱いされていた超能力も、ソラシドレスキューの 活躍で、世の中に認知されてきたように思える。  超能力を人のために役立てる。そんな願いが、少しずつ実現しつつあるように思えて、 満足感に浸る毎日が続いた。
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