第五章 恍惚と不安

6/19

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
「こいつだ。僕らを騙したのは」スマホを弄っていた陸くんが声を上げた。  どれどれ、とアッキーが陸くんのスマホを覗き込む。 「ひでぇな、こいつ。最低のカス野郎だ」とアッキーが吐き捨てる。  その言葉に私の涙が止まる。  顔を上げ「私にも見せて」と陸くんに告げる。 「天野さんは、見ない方が良いよ」 「見たいの」 「でも……」 「お願い」  私の言葉に、陸くんが渋々とスマホを渡してよこす。  そこには「英雄気取りはチョロイ奴w」とタイトルされたブログが表示されていた。  正義の味方ズラしたソラシドなんとかがムカつくので、嵌めてやった。  という文章から始まり、私達を騙した顛末が事細かに書き連ねてある。  私達を間近で撮影した動画もアップされている。  私達が飛び去って行く動画には『尻尾を巻いて逃げるタコw』の表題が付いていた。  それを見て、私の涙は引っ込んだ。  泣いていてはいけない。こんな人に負けてはいけない。そんな気持ちが湧いてきた。 「私は……、負けない」  その思いが言葉となって口をついてでる。 「そうだよ。こんな人達に負けないように、頑張ろう。私達」シーちゃんが同調する。 「そうだ。そうだ。こんな奴ら、無視すりゃ良いんだよ。俺らを理解してくれている人は 大勢いる。その人達のためにも今まで以上に頑張らないと」  アッキーが力強い賛同の言葉を打ち上げる。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加