第五章 恍惚と不安

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 翌日、陸くんはAI部室にやって来なかった。  10時を過ぎ、11時を見送り、正午の時報が消え去っても、陸くんは姿を現さない。  スマホやメールで連絡を入れても応答はなし。 「どこか、具合でも悪いのかな?」と口にしたけど、それが自分を胡麻かすための言葉で あることを、その場の全員が理解していた。 「あの野郎、逃げやがって」アッキーが悪態をつく。 「きっと、陸くんも悩んでるんだよ」と庇ったが、シーちゃんは同調してくれなかった。  SNS上には、幾つの救助要請が上がっていたが、何もすることは出来なかった。  切羽詰まった要請がないのが、唯一の救いだ。  翌日も、その翌日も陸くんは姿を現さない。連絡もとれない。  ネット上では、私達の動きがないことに対する話題が上がり始めていた。 「ソラシドレスキューお休み?」 「嵌められた事件が原因?」 「そんなんで活動止めるなんて無責任じゃ?」 「情報の真偽が分からなくて、動けないんでしょ」  といった具合。  好意的意見と批判的意見が半々てところか。  その次の日も、陸くんは来なかった。  このままじゃ駄目だ。なんとかしないと。  とにかく、陸くんと直接に話して、仲間に戻って貰おう。そういう結論になった。  だけど、私達三人が三人とも陸くんの家を知らない。  個人情報の保護とやらで、学校に聞いても住所は教えて貰えそうもない。  仕方がないので「手分けして捜そう」という事になった。
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