40人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
さて、陸くんの家の場所なのだが、多少なりともヒントがある。私が、初めて超能力を
発動させた日、私達は途中まで陸くんと同じ下校コースを歩いていた。だから、陸くんの
家は、私の家と同じで菅谷用水の西側の可能性が高い。徒歩での登校だから、学校からの
距離も見当がつく。
そんな訳で、菅谷用水の西側地区を、三人で手分けして捜すことになった。
さて、実際に捜索を始めてみると、言うほど簡単でないことが分かってきた。
佐藤という苗字を頼りに捜すのだが、標札を掲げている家は多くない。よしんば掲げて
いても、家族の名前まで公開している家は更に少ない。
その数少ない『佐藤家』を見つける度に
「佐藤陸さんのお宅でしょうか」「ご親戚に佐藤陸さんという方は居ませんか」と尋ねて
回る。
十軒、二十軒と空振りを繰り返すうち、徒労感で歩みが遅くなる。
汗で重くなった制服のブラウスが、体に絡み付く。
夏の暑さのせいもあって、頭がボーっとしてきた。
「あー、疲れた」思わず独り言ちる。
疲労のために、頭も体もチーズフォンデュのようだ。今にもとろけだしそう。
少し休もう。そう思って、小さな公園のベンチに腰を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!