第五章 恍惚と不安

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 次の日、私はもう一度、陸くんの家を尋ねる事にした。  陸くんの家の住所は、昨日のうちにシーちゃん達にも知らせてある。  だけど、陸くんと話をするのは私一人と決めている。  陸くんをソラシドレスキューに引き込んだのは、私だ。  だから、陸くんをソラシドレスキューに呼び戻すのも私の役目。  強い決心を胸に家を出る。  でも、陸くんを説得出来る当てはない。  陸くんは、ソラシドレスキューに対する嘘の救助要請を問題視している。その問題が、 解決しない限り、私達の元に帰ることは無いだろう。  でも、残念ながら私には妙案はない。シーちゃんやアッキーだって同じだ。  それでも、何とか説得するしかない。こうしている間にも、助けを求めている人達が、 居るのだから。  固い決意と、重い無力感を背負い、陸くんの家のインタホンを鳴らす。 「はーい」と言う声と共に、陸くんのお母さんが玄関に現れた。 「あら。天野さん」予想していた通り、お母さんは驚きの顔で私を出迎える。 「こんにちは。申し訳ありません。御迷惑も顧みずに、また御伺いしました。陸くんは、 ご在宅でしょうか」と頭を下げる。 「良いのよ、天野さん。そんなに恐縮しなくても、普通にして頂戴。でも、生憎だけど、 陸は外出中なの」  ああ、そうなのか。きっと、陸くんは私を避けるために外出したのに違いない。  徒労感が、私を押しつぶしにかかる。 「そうですか。すみませんでした。また、出直します」と私は、佐藤家を辞そうとする。 「待って、天野さん。あなたと、少しお話ししたいことがあるの。上がっていって頂戴」  陸くんのお母さんが、意外な言葉を口にする。 「あの……」私が躊躇する様子を見せると、陸くんのお母さんは 「陸について、お話ししておきたい事があるの」と続けた。
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