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「俺がお前を好きだという気持ちを、大脳皮質に刻み込む。日記なんか見なくても、永遠に消えることのない記憶を、明日花の脳に植え付けるんだ」
海馬腫瘍障害は、海馬にある、新しい記憶のみに影響を及ぼす。なれば、定着した記憶を司る大脳皮質に『お前が好きだ』という楔を打ち込めばいいのだ、と悠馬は豪語している。荒唐無稽な解決案に、明日花はいくつもの疑問点が浮かんだ。
「もし、忘れちゃったら、どうするの?」
「何回でも告白する」
「……それでもダメだったら?」
「どちらかが死ぬまで繰り返す!」
「それ、一生付き合えないじゃん!」
明日花は正拳を突き出すが、悠馬はそれをなんなく受け止め、握りしめ、手の甲を優しくなでた。明日花の顔が紅潮した。
これ以上説得しても無駄だと判断した明日花は、手を握りしめられたまま、今日の日記をどう書いたものか、ぼんやり思案していたのだった。
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