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「あたしさぁ、去年の秋にすごい恐い体験したんだけど、聞きいてくれない?」
親戚の集まりで久々に再会した従妹が、唐突にそんな言葉をかけてきた。
今年で二六になった従妹は、アウトドアが趣味で未だまともに彼氏すらつくろうとしていない。
休日になると季節を問わずに登山やキャンプへ一人で出かけるといった、自分が楽しむためのことならとことん行動力を示すタイプの人間なのだ。
そのせいか、年中日焼けした肌で体育教師のように引き締まった体躯をしており、性格もそれと比例するみたいに男勝りなのが魅力と同時に欠点とも言えた。
「お前が恐いなんて言うの珍しいな。熊とでも戦ったのか?」
「そんなんじゃないから。あのね――」
茶化すような言葉を返す俺の背中をパシンと叩き、従妹は自分が体験したという不気味な出来事を喋り始めた。
あのね、去年の七月の終わりに、一人でハイキングに出かけたの。
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