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当時、祖母は八十歳を過ぎており、皺くちゃの顔をにんまりとさせながら同僚の横へ並ぶように座り込んだ。
「せっかく来たのに、こんな雨じゃあ遊びにも行けないもんねぇ。せっかくだから、お婆ちゃんが一つ恐い話を聞かせてあげようか?」
元々、怪談やホラーゲームの類が好きだった同僚は、暇を持て余していたこともあり、祖母の申し出を受け入れて、出されたスイカに手を伸ばしながら語られた話に耳を傾けた。
今から二百年ほど前のこと。
この辺り一帯は、未曽有の大飢饉に陥り、多くの村民が飢えにより命を落としていた。
祖母の暮らすこの村も、昔は多くの村民が暮らしていたらしいが、大飢饉の際に老人はもちろん生まれたばかりの赤ん坊から働き盛りの若者まで、半数近い村民が倒れていったという。
それでも、生き延びた者たちで知恵を出し協力し合い、三年に及んだその大飢饉をどうにか乗り越えた。
しかし、当時存在した隣の村――と言っても、歩けば一日かかるくらいの距離は離れていたらしい――では、一人でも多く生き残る手段として、到底人間のすることとは思えないような、あまりにも惨たらしい手段が取られていた。
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