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序
物理学の一説、「並行宇宙」。
宇宙そのものが複数のコピーに分岐し、そのいずれもが現実になりうるとという学説である。
それによれば、宇宙は10の500乗くらい存在しており、中には我々とそっくりな世界、所謂パラレルワールドなるものが数多く存在している。
地球に似て、非なる世界。
これは「宇宙」と名付けられたある時空の中の、ある惑星で起きた小さな物語。
振り返って、長い時で隔たれた過去のある日。
空の一角が突然溶けた。
くすんだような青の合間に、漆黒の闇が姿を現す。その闇から多くの塊が散らばって、幾つもの町を破壊した。その塊は魔物だった。人は逃げ惑い、食われ、殺され、阿鼻叫喚の中で消えていく。
溶けた空が閉じ、時が流れ世界はまた静かになった。
辛うじて生き残った者たちはその様子を記したが、いつか形骸化した昔語りとなっていく。
しかし、空間の歪みからから生まれたモノは、神も天国も虚構である世界でしっかりと息づいていた。
「魔のモノ」「モンスター」「怪物」「在り得るべからざるモノ」。そう呼ばれる殺戮と破壊を求めるモノたち。
彼らは生気を欲し、命を欲した。そのほとんどが謎の死、行方不明、突然の事故、急死、原因不明の病死、野犬や熊、狼などに襲われたとして扱われた。
消えていくいくつもの命。
「命さえ要らない、お前たちを根絶やしに出来るなら!!」
慟哭の中に誓いを立てた遺された者たちが影として生き始める。それぞれが自分の物語を抱えながら。人は彼らを『ハンター』と呼んだ。
彼らにとって、報酬は二の次だ。自分の命を預けられる相手とだけ動く彼らは、ほとんどが復讐のために、命を懸けて魔のモノに挑んでいく。
組織を嫌い、独自の探索で獲物を追い、時には刺し違えてでも魔のモノを殺すことだけが目的の者たち。
自分たちの手にあるのは、本能とナイフと銃だけ。
政府の高官や著名人たちの中にも被害者はいたが、彼らは真実を信じることはせずに、救ってくれたハンターさえも汚らわしい犯罪者を見るような目で扱った。
ハンターたちは『常識』という名のもとに阻害され、狩りも『法』の名の下に裁かれていく。人間に化けて死んだ魔物はあくまでも被害者として扱われたままだ。
そんなハンターの世界で、ある世代から人間のものではない特殊な能力を持つ者たちが出現し始めた。
魔のモノと知らず、愛し合ってしまった人間から生まれた者。魔のモノに犯されて生まれた者。その中に取り込まれた遺伝子が脈々と受け継がれ息づき始める。
彼らは、まるで磁石のように一つに結びついていく。そして宿命に操られるように魔のモノたちと対峙することになる。
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