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始まりはそうだ。
どんな波だって始めは小さい。
しかし引いては返すを繰り返す度
最後には人も船もみんな飲み込む荒波になる。
「美味い――美味いよ、和樹くん――」
逃げ出せなくなってから考えたって遅いんだ。
「アッ……アアッ……こんなのダメだってば……!」
ルカに血を啜られて僕は総毛だった。
身悶えながらラグの毛足を掴み必死で起き上がろうとする。
「大人しくしてろ……」
「薫お兄様っ……」
「大人しくしてるんだ」
だけど
我を失くした次兄の力は思いのほか強くて。
「いやぁ……やめてっ……!」
「クッ……」
真白な肌を桜色に染めながら力尽く
僕の中を掘り続け滾る欲望のをぶつけ続ける。
「アア……」
「さて。次はいよいよ薫くんの血をいただこうか」
目を閉じてあきらめ半分僕は思う。
ここへやって来た時求めていた場所から
僕は今、最も遠いところにいるんだと――。
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