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「おまえには……特に……特に恨みなんかない……」
目に焼きつく燃えるような鮮血。
不釣り合いな優しい声音で薫は続ける。
「ごめんな、和樹……俺の血で汚れちまう……」
僕の胸の上にポタリポタリと
流れ落ちる己の血を指先で掬って薫は僕に詫びた。
「ウ、ウ、ウアァァァァァ!!」
吠えたのは狂った聖職者だ。
両手で頭を抱え覚醒するモンスターのように髪を掻き毟る。
それから薫の首筋を鷲掴みにした。
「やめろ!ルカ……やめろっ……!」
僕は叫んだけれど薫は無抵抗だった。
いやむしろ自ずから首筋を差し出したように見えた。
「彼一人殺しはしないさ。済んだら僕も一緒に逝く――」
背筋が凍り付く。
ルカは薫の上半身を優しく抱き寄せその首に口づけた。
「ダメッ……やめろ……こんなのダメだ……」
そして始まる――最期の吸血。
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