episode247 アッチェレランド

17/30
前へ
/30ページ
次へ
「おまえには……特に……特に恨みなんかない……」 目に焼きつく燃えるような鮮血。 不釣り合いな優しい声音で薫は続ける。 「ごめんな、和樹……俺の血で汚れちまう……」 僕の胸の上にポタリポタリと 流れ落ちる己の血を指先で掬って薫は僕に詫びた。 「ウ、ウ、ウアァァァァァ!!」 吠えたのは狂った聖職者だ。 両手で頭を抱え覚醒するモンスターのように髪を掻き毟る。 それから薫の首筋を鷲掴みにした。 「やめろ!ルカ……やめろっ……!」 僕は叫んだけれど薫は無抵抗だった。 いやむしろ自ずから首筋を差し出したように見えた。 「彼一人殺しはしないさ。済んだら僕も一緒に逝く――」 背筋が凍り付く。 ルカは薫の上半身を優しく抱き寄せその首に口づけた。 「ダメッ……やめろ……こんなのダメだ……」 そして始まる――最期の吸血。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加