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ドクドクととめどなく脈打つ中心と
同じくドクドクと流れ出る血潮に塗れて
薫はゆっくりと目を閉じた。
「いやだ……!いやだ……!薫お兄様っ……!」
僕は自分の不運を呪った。
もう二度と快心なんかすまいと誓った。
神にではない。
悪魔でも何でもいい。
すべて元通りにしてくれるなら
僕の良心や善意などそいつにすべてくれてやるから。
「助けて……!助けて……誰かっ……!!」
僕は声の限りに叫んだ。
その時。
「仕方ないな」
何者か
僕の祈りを聞き入れたもうたか――。
「……え?」
地下室の扉が開き
十字架のオブジェが宙を飛んできた。
そして――。
「クッ……!」
十字架は吸血鬼に打ち込まれる杭のように
ルカの左肩にヒットして彼の身体を吹き飛ばした。
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