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「うわあ、見たかい?ナイスコントロールだね、僕」
こんな時に現れて
平然とこんなことできる人――誰だか決まってる。
「やあ、オフィーリア。なんて無様な格好だ」
「椎名さん……!」
椎名涼介は悪態をつきながらやってきて
チラリと瀕死の僕らを横目で見るや
「これで傷口を塞いでいなさい」
随分キッチュなリンゴ柄のポケットチーフを放ってよこした。
MADAM SIINA――彼のお祖母様デザインのものだ。
「いいか和樹?思いっきり強く抑えてるんだ。でなきゃ白雪姫が死んじまう。君の前を拭うのは後だ。分かったか?」
本当にこんな時でもこの人は
安穏と僕に笑って見せるんだから。
「……分かった」
でもそれで僕もなんとか
血を流してぐったりした兄の身体を
押しのけるだけの落ち着きを取り戻した。
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