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不器用な手つきで止血する僕は
真っ赤に染まるリンゴのチーフを持ってあわあわするばかり。
「どれどれ」
椎名さんは踵を返すと平気な顔でやってきて
スカーフを持ち上げ出血箇所を確認する。
「なるほど」
僕なんかチーフを捲ることもできないのに。
この冷血人間は――まじまじと傷口を直視して頷いた。
「大丈夫。人が死ぬほどの出血はこんなもんじゃないから」
「はあ……?!どうしてあなたにそんなこと分かるんですか!」
この人が言うからには到底嘘とも思えない。
だからと言って信用できたものでもない。
「こんな時に余計な詮索はやめたまえ」
「薫お兄様……本当に……死んだりしない?」
「でもま、グズグズしてる時間はないな」
それはさすがに僕にも分かった。
いつ狂った吸血鬼が起き上がるや知れないし。
薫の状態もいつ急変するや知れない。
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