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「彼は僕に任せて、君はさっさと服を着ろ」
自分の上着を脱いで薫の身体を覆うと
椎名さんは冷静な口調で僕に指示した。
「はい……」
考えるのは後でいい。
ここはこの人の言うとおりするしかなさそうだ。
とにかく早くここから出なければ――。
僕はよたよたと立ち上がると
とりあえずシャツとズボンを身に着け靴を履いた。
あとは薫のモノか自分のモノか分からない
服の山をかき集め小脇に抱える。
「――とにかく彼を病院に運ぼう」
椎名さんは慎重に薫を抱き上げると
ほんの一時。
いまだ地面にキスしたままの
惨めな聖職者に目をやってから先を駆け出した。
僕は地上に出るまで
元居た世界へ戻るまで夢中で彼の背中を追いかけた。
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