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「出血量の割には傷は浅いとさ――」
病院に着くと薫はすぐに処置室へ運ばれた。
どう見たって不可思議な傷口。
だが自殺未遂だと言う錬金術師の言葉を
医師たちは誰も疑わなかったし。
僕らにはこういう時にこそ便利な
天宮という名があった。
だから警察沙汰はおろか
深く事情を聞かれることすらなく薫は治療を受けられた。
「君に『善意の革命』の話をしてからずっと気になってたんだ。そろそろ何か起こるんじゃないかと思って」
人気のない待合室の椅子に深く沈む
僕の肩を組むようにして椎名さんは隣に腰を下ろした。
「ありがとう。今日は本当に感謝しています」
今日ばっかりは――僕も素直に頭を下げた。
「でもどうして僕らが今夜あそこにいると分かったの?」
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