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「そのことなんだけど――」
椎名さんはらしくもなく
少し口ごもってため息交じりに言った。
「僕に感謝してると言うなら、この件でお兄様たちに何を聞かれても僕の名前は出すなよな」
「え……?」
こんなことがあった矢先だ。
多少頭がぼんやりしているのは仕方ないとしても。
「どうして……お兄様たちがこの件を……?」
知るはずがない。
場所さえ知られていないのに。
今夜の出来事を知られるはずない。
僕の顔にはそう書いてあったのだろう。
「違うんだ、和樹――」
椎名さんは気の毒そうに小さく首を横に振った。
「違うって何?え?一体何の話ですか?」
頭を抱えた。
貧血を起こしそうだ。
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