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染井の部屋には何度も来たことがあったし、泊まったことも何度もある。
雑然とした普通の部屋だし、少し染井の匂いがする位で別になんともない。
「吉野なんか飲むか?」
「染井が飲むなら。」
「じゃあ、なしだな。」
ぼんやりと座り込む。
大分酔っているのかもしれない。
染井がいつもの様に俺の隣に座ろうとしてから、少し離れたところに座った。
そんな事実に地味に傷付いてるんだから俺は馬鹿だ。
家で映画を見るって話だったのだろうか。
染井は動かない。動画配信で見る形だと思ってたのにノートPCも出さないし横に座ったまま話しかけもしない。
「あの日、本当に何にもなかったの?」
「は?」
染井が何を言っているのか、よく分からなかった。
だけど、あの日がどの日の事を言っているかは分かる。
「何もって、男同士でヌキあいって時点で充分アレだろ。」
何も無かった訳じゃない。でも何かあったことにはできない。
だけど、俺のそんな気持ちは染井の一言で意味が無かったことを知る。
「そんなに、無かった事にしたいんだ。
俺とのセックスはそんなに嫌だった?」
ヒュッと自分が息を吸う音がやけに大きく聞こえた気がした。
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