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自分の部屋のベッドの上で目が覚めた、つもりだった。 けれど実際は見たことも無い広めのベッドの上で、横には大学の友人の染井がいた。 そこまでならいい。酔っぱらって終電逃して二人で適当なホテルに泊まった。馬鹿だとは思うがまあ許容範囲だ。 問題は多分そこじゃない。 お互い素っ裸で、精液で腹のあたりはガビガビになっていて、それから腰とケツがきしむように痛い。 何をしてしまったかなんて分かり切っている。おぼろげな記憶しかないけれど、それでも断片的には覚えているのだ。 酔った勢い。それ以上でもそれ以下でもない。 そこに俺のどんな気持ちがのっかっていようと事実としてはそれだけだ。 だけど、それならせめてちゃんと覚えていたかったと思った。 それを一生の思い出にできるかもしれないのに、どんなに思い出そうとしても記憶を上手くすくいとれない。 「あーあ。」 仕方が無い。そんな事を思い出すより大切なことはもっと別にある。 染井が目を覚ましたらちゃんと友達の顔をして、昨日の事は全部無かったことにしなければならない。 体を起こすと筋肉痛と腹痛が合わさった様な痛みがして思わず唸る。 体を洗って、痕跡を全部消してしまいたかったのに、その動きでか、それとも俺の声でなのか分からないが、染井が身じろぎをした。 目を覚ましてしまう気配に、ギクリと固まる。 声を出さなければ気が付かれなかったかもしれないのに。自分の馬鹿さ加減に思わず乾いた笑いが出た。 「おはよー。」 ふにゃりと目尻を下げて染井が言った。 まだ頭が覚醒しきっていないのか、それとも相当飲んでいたから記憶が無いのか。 染井の顔からは何もわからなかった。
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