幕前

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幕前

 闇に包まれた地下深く―― 「首尾はどうであるか」  そう問われた男――黒い甲冑を身に纏う[将軍]が「御覧下さい」と大仰な仕草で示した方向には、とてつもなく巨大な[石の棺]を思わせる建造物が聳えていた。その周囲には、何処から運び込んだのだろうか、大型クレーンが数台並び、傍では覆面姿と思われる集団が、建造物の天井を取り除こうと準備を進めている。 「この[棺]に眠る[神の御身体]……[帝王]が造りし[悪意の札]により、それは、あなた様の思いのままに動くことでしょう……」 「この地に伝わる[神]……その中に眠る[悪意]を利用し、世界を震撼させる災厄を引き起こす……その時こそ、我が野望が成就する時……」 「[帝王]……」  そう言いながら近づき、跪いたのは、装飾の派手なツノ付きティアラを身に着けた、やや露出の高い衣装の[女幹部]…… 「[例のモノ]も、既に準備が整っております」  その言葉とともに捧げられたジュラルミンケースの中を見て満足げな、感嘆の声を上げる[帝王]…… 「……これは、まさに[本物]以上の出来映え、もはや芸術品と呼んでも差し支えない……これは、この計画の後も、我が組織の活動資金としても活用可能なものだ……」 「勿体なきお言葉……」 「いよいよだ……いよいよ、愚民どもが我が名を刻み、それにより、世界に君臨する[長]となるのだ……」
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