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種子島飛行準備棟前
ジュンと渡辺はオレンジ色の宇宙服を着て、準備棟の建物を出た。
準備棟の前に彼等を発射台まで運ぶワンボックスワゴンが停まっていた。その前に健一が柔らかい表情で彼等を待っていた。
健一が最初に渡辺に握手を求めた。
「渡辺君。私の代わりに難しい任務を受けてくれてありがとう。頑張ってくれ。期待している!」
「高橋さん。もちろんです。必ずミッションを成功させて見せます」
二人は固く握手し、健一が渡辺の肩を叩いた。
健一がジュンに向き直る。右手を差し出している。
「順一君。君の能力と努力に感謝をしたい。君なら必ずミッションを成功させるだろう。頼んだぞ」
ジュンは健一の右手を力強く握りながら微笑んで言った。
「必ず成功させます。高橋教授の意志を継いで、マリーを助け、そして再生医療技術を必ず次のステージに押し上げてみせます。期待していて下さい!」
ジュンのその言葉に健一は大きな感動を覚えた。ジュンがどんな苦労をしてこの日を迎えたかを良く理解していた健一は、この若者なら絶対成功させると改めて感じていた。
「それでは高橋教授行って来ます。管制センターからのサポートを宜しくお願いします」
ジュンの言葉に健一は大きく頷き、彼等がワンボックスワゴンに乗り込むのを見送った。
渡辺とジュンは発射台に到着した。
今回の有人ロケットの打ち上げに合わせ、発射台にはエレベータの設置が行われ、H3―24Lロケット先端に取付けられた司令船フェニックスに発射台上で乗り込める改造が施されていた。
二人はエレベータを降り、司令船へのアクセスブリッジを渡った。司令船の前で二名の整備士が彼等を待っていてくれている。
二人が司令船に乗り込むと船長の渡辺が左席に、操縦士のジュンが右席に座った。
整備士が二人に宇宙服のヘルメットを渡してくれる。それを頭から装着し、首元でロックする。
整備士はシートベルトの装着の手伝いを終わると、司令船の外に出て、外部から司令船のドアをロックしてくれた。
整備士がアクセスブリッジを渡って発射台に戻ると、アクセスブリッジは司令船から離された後に格納された。これで最後の荷物である宇宙飛行士の搭乗が完了した。
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