第2章 父の帰国

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建物を出るとジュンは足早に進んでいく。 「ちょっと待ってよ!」 夏姫のその声にジュンが足を止め振り返った。 「貴方、女の子と歩いた事無いでしょう。そんなスピードじゃ付いていけないじゃない」 ジュンが頭を掻いている。 「そうか・・ 俺、まともに彼女が居た事無いから気付かなかった。それじゃ、手を繋いで行こうか」 そう言うとジュンは夏姫の右手を自分の左手で握った。 「ちょっと!」夏姫は手を離そうとしたが外す事が出来なかった。 「これで離れずに歩ける」ジュンの手は力強く夏姫の手を握っていた。 夏姫はその強引さに仕方無いと首を振り、手を引かれて進んで行った。 この先は教員の駐車場があって、その先には・・ 「ヘリが着陸している・・」 夏姫は駐車場の横にあるヘリポートに青いヘリが駐機しているのを見つけ”そうかさっきの音はあのヘリだったのね“と思った。 ジュンはそのヘリポートへ夏姫を導いていく。 「えっ? もしかしてこれに乗るの?」 夏姫はビックリしながらジュンに聞いた。 「そう、このヘリ俺のだから」 「えっ? これが貴方のって・・? どういう?」 夏姫がそう疑問を投げかけるとジュンが立ち止まって答えた。 「アメリカで固定翼と回転翼の免許取ったんだ。だから操縦資格を持っている。今日はこのヘリを新木場の東京ヘリポートからレンタルして来た。ちゃんと飛行プランも出している正規の飛行だから、大丈夫だよ」 夏姫は目を見開いて、前に立っている男の子を見つめた。 (この人、何者なんだろう・・) 「このヘリはロビンソンR44という四人乗りのピストンエンジンヘリさ。入門機だね。俺はタービンエンジンのヘリも操縦出来るけど、レンタル代が高かったから今日はこれで飛ぼう」 そう言ってジュンは左側のドアを開けそこにあるシートに座る様に夏姫に促した。 「さあ、お座りください。お姫様」 ジュンが戯けた様に手を胸に当て、大きく頭を下げて見せた。 (仕方ないわね)と、覚悟を決めて夏姫はヘリの左席に腰を降ろす。 ジュンがヘリの外から三点式のシートベルトを締めてくれる。 そして左の窓枠の上にぶら下がっているヘッドセットを頭に被せてくれた。 ジュンは左のドアを閉じると、ヘリの前側を周り、右のドアを開けた。 そして右の席に着席して、同様にシートベルトをしてからヘッドセットを被った。
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