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夏姫は三点式のシートベルトに支えられ地面に叩きつけられる事は無かった様だ。
「ナツ、大丈夫かい?」
右を振り返ると、ジュンもシートベルトに支えられ、心配そうにこちらを見ている。
「うん、大丈夫。怪我もしてないわ。何が起きたの?」
「テールローターが破損したんだ。運が悪かった・・」
ジュンが後ろを振り返りながら言った。
直ぐに河川敷に居た人々がヘリに近づいて、二人をヘリから救出してくれた。
遠くから救急車のサイレンが近づいて来ていた。
二人は幸いのことに、まったくの無傷だった。これは不幸中の幸いだった。
そして、ヘリの事故の原因は直ぐに判明した。テイルローターのローターブレードの固定ボルトが少し小さいサイズのものに取り替えられており、飛行による回転力にボルトが耐え切れず、ローターブレードが破断したんだ。
そして、東京ヘリポートの防犯カメラに映っていた機体の整備の様子から、そのボルトの取り替えはこのヘリコプターのリース担当だった高山が行ったことが判明した。
彼は意図を持ってヘリを墜落させようとしたのだ。そして高山がカルト教団HTDCの日本支部のメンバーである事が分かった。
これはアレスVの事故と同様のテロ事件だったのだ。
ジュンと夏姫は、未だ続けられるテロに脅威を感じながらも、そんな人達に絶対負けないと改めて思い直していた。
そして、国産宇宙飛行準備に関する人達、その家族に対する警備レベルが大きく上げられた。
ジュンの打上げまで残り三週間だったが、成功に向けては更なるハードルを超えて行く必要があると皆が感じていた。
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