第18章 H3ー24L打ち上げ

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種子島空港の到着ロビーに出ると、ジュンが手を振っているのが見える。 「ナツ!」 夏姫も手を振ってジュンの横に走り寄った。 ジュンが夏姫の荷物を持ってくれる。 「こっち。車で種子島宇宙センターへ行こう」 ジュンは駐車場に停めていたJAXAの社用車に夏姫を乗せ、種子島空港を後にした。 「ジュン、明日の準備はもう大丈夫なの?」 夏姫は車の助手席から、運転をしているジュンに話し掛けた。 「勿論、もう全て終了している。明日の天気も問題なさそうだから、トラブルが無ければ予定通り打上げだ」 そう言ってジュンは胸を張った。 「ES細胞の全能化の方は? 目処立ちそう?」 「うん、帝国大学の実験室でも幹細胞の全能化の一歩手前まで分裂が進むんだけど、どうしても途中で止まってしまうんだ。実験室に自由落下施設を作って、2.5秒だけの無重量状態を再現しているんだけど、そこでは全能化に向けた分裂が再現できる。でも無重量の時間が短すぎて、その後、様々な臓器を再生させる母細胞まで地上の実験室で進化させる事は出来なかった。だから、軌道上の国際宇宙ステーションの無重量状態であれば、ここを一気にブレークスルー出来ると言うのが高橋教授の考えだ。俺もそう思う。でも本当に百パーセントの確証があるかと言うとNoだ。行ってみないと分からない。でも・・」 「でも、俺は必ず成功させる。そしてマリーを絶対助けてみせる!」 ジュンはそう力強く言った。 種子島宇宙センターに向けて南に走る車道の横には沢山のサトウキビ畑が見える。空は真っ青で南国の太陽がサトウキビ畑を照らしていた。 車は四十分程で種子島宇宙センターに到着した。 ジュンは宇宙センターを左手に見ながら車を少し先まで走らせる。五分程で、左手に広い駐車場が見えて来た。 ジュンはそこに車を停めると、夏姫に車から降りる様に促した。 駐車場の先は展望台になっており、遠くに発射台が見える。
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