ごめん…ありがとう…

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学校に行くと誠が珍しく先に来ていた。 「おはよう鈴香」 「あ、お、おはよう」 私はいつものように返せなかった。いつもならスっと返せるのに…。 「ねぇ誠。今日の放課後さ…いつもの公園で会えるかな?」 私は俯きながら聞く。 「あぁいいよ。いつもの公園な?帰ったらすぐでいいか?」 「うん。帰ったら公園ね」 そう約束してホームルームに参加した。 一日中学校で引越しのことをどうやって誠に言おうか考えていた。そのせいで誠との会話や授業を全然聞けてなかった。 やっと学校が終わり、走って家に帰る。家に着いたら急いで着替え、家を出る。向かい先は公園ではなく、スーパーだ。 買い物をした後、家に戻り綺麗にラッピングをする。時間が結構かかってしまって誠を待たせてしまった。走って公園に行くと誠が公園入口に立っていた。 「ごめん誠!ハァハァ…待たせちゃって…」 息切れをしながらそう言う私の頭を撫でてくる誠。誠の手がいつもより暖かく感じる。 「あのね…これ!今日バレンタインデーでしょ?それでね。これ渡そうと思って。」 「あ、今日バレンタインデーか!ありがとう鈴香!」 「あ、あとね…実は…その…」 中々言い出せない私に気を使ってくれたのかベンチに座って誠の隣の空きスペースにポンポンとしている。 私は座って、俯いた。 「それで…どうしたの?鈴香」 誠が優しく聞いてくる。 「あのさ…私達…別れよ?……」 つい言ってしまった。何故こうなったのかは分からない。でも、そう言ってしまった。これがお互いのためだと思ったから。 「そっか…」 少しして誠が口を開いた。立ち上がって去る誠を止めようとしたがやめた。止めても悲しくなるだけだ。 その日以降、誠と出会うことはなかった。
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