[ヒロイックファンタジー]MOMOTARO

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[ヒロイックファンタジー]MOMOTARO

村は焼かれ、女子供は連れ去られ、男たちは殺され、残りは強制労働させられた。 大平原は奴らの足跡で埋め尽くされ、森の木は次々と切り倒されていった。 漁師の船は沈められ、海ですら危険な場所と化した。 これらの大災害の全ての元凶は、『鬼』と呼ばれる魔人。 彼らの王が城を構える孤島は、いつしか鬼ヶ島と呼ばれるようになった。 だが、立ち上がった者がいたのだ。 鬼の蛮行が届かない森の奥で、ひっそりと暮らす老いた夫婦のもとで育てられた男の子。 毎日怯えながら生きる現状を変えようと、若いうちから特訓を積んだ彼の名は吉備津彦命きびつひこのみこと。 十八歳の誕生日に、みことは両親から『黍鉱しょこうの勾玉』と呼ばれる、家に代々伝わる鉱石の玉を授けられ、鬼を討伐する旅へ出る。 貧困街、佐津間さつま。 命はそこで最初の仲間を手に入れる。 「あたし、ツン。 苗字? そんな贅沢なものないわ」 獣の耳を生やした、やや幼さが残る容姿の彼女は、言った。 「お兄ちゃんがね、病気なの。 お医者さんでも治せないんだって。  でも、その勾玉なら治してくれるってお医者さんが言ってたんだ」 神道街、日栄ひえい。 「お前、その宝玉をくれねぇか? 俺の収蔵品にしたいんだ」 珍しい鉱石を集めている、町長のしゅうきち。 命が持っている勾玉と引き換えに彼は、旅の仲間に加わった。 研究者の村、津島つしま。 最後の仲間は、若い研究者だった。 「私の名前は白雉はくち。  ふむ、どんな病気も治す鉱物……か。 なるほど、興味が出た。 同行してやろう」 幾多の苦難を乗り越え、ついに海の向こうに鬼ヶ島が姿を現した。 「みんな、ここからは生きて帰れるか分からない。 今ならまだ間に合うよ」 「ここまできて引き返すわけないじゃん。  それに……お兄ちゃん助けてくれた恩も返さなきゃ……だし」 「俺は何処まででもついてくぞ? あっちには希少な鉱物があるって噂だしな!」 「全く……君には手を焼くよ。 しょうがない、ついていってやる」 照れながら、力強く、呆れて。 反応はさまざまに、仲間は強い絆を口にする。 「みんな……」 思わず出そうになる涙をこらえ、命はきっと遠方の島を見据える。 「―――よっしゃ! 始めようか、天下の鬼退治!」
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