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「いらっしゃいませ!」
老年女性の溌剌とした挨拶に迎えられ、私はゆっくりとカウンターに腰かけた。店内は極彩色のインテリアで埋め尽くされ、サイケデリックな雰囲気を醸し出している。これが「キョバムカ」という未知の国の、特有の文化なのだろうか。
「ウオオオオオ!!!」
突然、目の前の厨房から地鳴りのような叫び声が響いた。その声の主は、半裸の老コック。露わになった胸板には、アルファベットの「K」にも似た紋章が刻まれていた。そしてその手には今しがた破いたばかりの、自身の割烹着の残骸が握られていた。
「ああ、どうもすみません。ウチの主人、というよりキョバムカの男は、気持ちが昂るとつい裸になってしまうのです。久しぶりのお客さんが、嬉しかったのでしょうね」
「は、はあ……」
老女が陳情しながら、水とおしぼりを手渡す。私は突然のカルチャーショックに眼を丸くしながら、ゼリー状の水と、カツオブシのように蠢く奇怪なおしぼりを受け取った。
「それで、ご注文は?」
「コースメニューを」
老女は「かしこまりました」と快諾し、キョバムカの言葉で主人に注文を伝えた。
どうやらキョバムカという国は、予想以上に個性的な国のようだ。美食を求めて世界中を旅した私も、店内で目に映るありとあらゆるものに驚きを隠せない。きっとこの店ならば、当然眼だけでなく舌にも新しい刺激を与えてくれるに違いない。そう思い、期待に胸を膨らませていると……。
「お待たせしました。前菜でございます」
「えっ?」
数秒も経たずに、一品目が差し出された。老女が蓋を開けると、そこには驚くべき光景が待っていた。
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