キョバムカ ~新しい味~

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 縞模様の巨大なカエルが皿の上に座し、三つの眼で私を睨みつけている。しかもそれは……。 「これ、まだ生きて……」 「ええ。新鮮でしょう? これがキョバムカの国民食、『ポトンプァ(対話)』です」  踊り食いは国内でも幾度となく体験してきた。しかしカエルなど、しかも三つ目の品種など、一度も口にした事は無い。「新しい味」を追い求め、真新しいものは迷わず頬張ってきた私でも、流石に躊躇せずにはいられなかった。 「……答えよ」 「ひっ!」  突然、カエルが言葉を放ち、私に呼びかけた。恐怖と驚愕に全身を震わせる私に対し、カエルは容赦なく言葉を続ける。 「私は何故、ここにいる?」 「!? 何故って……」  その言葉は単純な質問というよりも、詰問とでも言うべき重みを帯びていた。 「早く答えよ、さもなくば……」  カエルは一層語気を強め、鋭い眼光と共にじりじりと距離を詰める。まるで、私を食らおうとするかのように。 「さあ! 勇気を出して」  老女が私の背後に回り込み、羽交い絞めにしながら激励する。また厨房の老コックは、顔中の皺という皺を全て浮かべ、包丁片手に鬼の形相でこちらを見つめている。「俺の料理が食えないのか」、とでも言わんばかりに。  そうして追い詰められた私は、弱々しい声で返答した。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加