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夕刻。団欒の時に別れを告げ、私は店を後にした。
「もう、行くのかい?」
母が名残惜しそうに問いかける。父はただ、何も言わなかった。
「ああ、だって俺は……」
新しい味を追い求める、さすらいのグルメなのだから……。
今宵もまた、「新しい味」を求めて彷徨い歩く。何故だか、いつもより夜風が心地良い。
「ちょっとそこの人、止まりなさい!」
「えっ?」
突然、二人の警官に呼び止められる。何故だろう。
「まさか、今時こんな不審者に出くわすとは……」
そうだ。私は服を破り捨てたまま、店を後にしていたのだ。つまり今の私は、全裸。
「ちょっと署までご同行を……」
二人の警官に引きずられるようにして、私は連行された。どうやら次なる「味」は、カツ丼のようだ。
<完>
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