可愛い彼女、みつけてね

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 隼人は千里より八歳年下だ。隼人の同級生が集まるというなら、みんなそのくらいの年齢で、その彼女や嫁という人たちはさらに若いのだろう。もともと人見知りの千里は自分がその場でういてしまうのが、目にみえるような気がした。  仕事の場ならそれでもよかった。自分に与えられた役割を演じるだけだ。でも、はっきりした役割の与えられない流動的な集まりは苦手だ。 「じゃあ、晩ご飯は一緒に食べようね」  結局、隼人は昼から高校時代の友人たちと国立競技場で観戦し、夕方には千里の部屋に来る、と約束したのだった。  が、今も連絡はとれないままだ。最初からくるつもりはなかったのかもしれないと、千里は冷めた気持ちで考えた。  試合結果を検索すると、隼人の出身高校は無事に試合を勝ち抜いたようだった。 「こりゃー、どっかで祝杯あげてんなー」  つとめて明るく大きな声で言い放ち、冷えていくコテージパイをみつめながら、千里は冷蔵庫から缶ビールを出してぷしゅっと開けた。  隼人はそういう調子のいい男で、自分はそれをちゃんと理解している。千里はそう考えた。  わかってる。そんなお人好しでいい加減な男を自分は好きになったのだ。だから、さびしいなんて思うわけない。隼人は今頃、私以外の誰かと楽しくやっているんだろう。それでも全部、これでいいのだ。
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