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じゃあ、別れよう。最後にそういえば、こんな愁嘆場も終わる。
そう思うのに千里の口は動かない。鼻の奥がつーんとなって、ゆっくりと視界がにじみ始める。
(愛してなんていなかったくせに、今さらみっともない。泣いて男をひきとめようなんて、弱い女のやることだ)
いつも恰好ばかり気にして。つまらない女。
そう自分に怒りながら。それでも千里の中にいる小さな女の子が泣いている。
声にしない声で叫んでいる。
(捨てないで。捨てないで。私もママのことも捨てないで)
父が出ていったあの日、きっと千里にはどこかでわかっていたのだ。父をひきとめないことが私の「愛」で「正義」なのだと、
千里はここにいない母に向かって叫んだ。
(あのとき、変身もせず、魔法もつかわなかったけれど、私は私なりにちゃんと戦ったんだよ)
最後まで自分のプライドを守った母。生まれ来る新しい命を守りにいった父。みんなが幸せになれるように、千里はあのとき『キューティー*ウィッチ』には変身しなかったのだ。
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