可愛い彼女、みつけてね

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     隼人がいきなり頭をさげた。 「千里さん、俺、未熟だから、あなたの愛し方がわからなくて、ごめんね。あなたを可愛い人にしてあげられなくて、ごめんなさい」  なぜあなたが謝るの、と混乱しながらも、悔悟のにじむ言葉をきくと、とうとうこらえきれずに頬を熱い一滴がつたった。 (子供ままでいさせてあげられなくて、ごめんね。きっと私は、誰かにその言葉をいってほしかった)  もっともっと幼い時間がほしかった。弱くて、たよりなくて、身勝手で。そんないとけなさをさらけだしても許される、甘く優しい時間がほしかった。  満たされなかった千里は、この年になってもまだ、かつての渇望を捨てきれないでもがいている。そのくせ、幼いままの自分を隠して、ものわかりのいい大人を演じようとしてしまう。 「大丈夫。隼人はいい男だよ。だから、私よりもっと可愛い彼女みつけてね」  涙をこぼしながら必死で笑った。過去最高にみっともなくて一生懸命な千里だった。  隼人は服の袖でごしごし顔をぬぐった。千里の目には少年みたいな愛しい仕草だった。 「うん、次は絶対にもっとうまくやるから。ちゃんと男らしくするから。だから――千里さん」  隼人は鼻の先を赤くしたみっともない顔で笑った。 「もし俺とやり直したくなったら、また連絡ちょうだい。いつでも待ってるから」  隼人の声は一生懸命であたたかかった。そして、こたつから立ち上がると、千里に背中を向けた。  廊下に出ていく靴下の足音が響き、玄関の扉が開いて、閉まる音がした。  追わなければとは思わなかった。捨てないで、とももう思わなかった。  ただ、私には考える時間が必要だ、と千里は考えていた。いつか隼人と新しい関係を築くために。  それまで少し距離を置く。  本当の自分をさらけ出せる覚悟がきちんとかたまったとき、そのとき。  今よりきっと、可愛い彼女が隼人を待っている。 了
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