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いよいよ出棺と言うとき、泣きながら棺にお花を入れる、中学生ぐらいの男の子がいました。
「ばあちゃ……」
彼は泣きながら棺に花を入れています。その後ろで待っている、大学生ぐらいの男の子もつらそうな表情を浮かべています。
「あの子たちは私のひ孫でね、よく懐いてくれたよ……」
ほかの親戚縁者もみんなが涙を浮かべ、タエさんは一人一人に頭を下げている。
複雑な思いを浮かべるタエさんを見て、
「大丈夫ですよ。必ず貴女の想いをついで、生きてくれますから」
「……、そうさね」
その時、私のスマホに、天界でスタンバイしている先輩からメッセージが入りました。
「タエさん、ちょっと待っててください」
「ん? 急にどうかしたのかい?」
「はい。上司からのメッセージがありまして、少しお待ちください」
私は物陰に隠れてメッセージを送ります。
「先輩、どうしたんですか?」
「大変だ。タエさんの旦那さんがどこにいるかわからないんだ」
「ええっ!? どうして!?」
「理由もわからないよ。データベースを漁っても出てこないんだ。今、過去の書類を探してる」
現世で亡くなった人の多くは、天界で静かな時間を過ごしてます。出迎えのために私たちが呼びに行くのですが、どこにいるかわからないとは……!?
「とにかく急いで探すから、少し時間を稼いでくれ」
「ええっ!? は、はい……」
大変なことになりました。とにかくまずなタエさんのところに戻ります。
「それじゃあ、行こうかね」
「ま、待ってください、あ、えーと……、火葬場の方まで行きませんか? 最後の時は見ておいた方がいいと思います」
「そうかい?」
きょとんとした顔を浮かべながらも、タエさんと私は霊柩車に乗り込みました。もちろん人間から姿は見えません。
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