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なかなか眠れなかったせいで、起きるのも一苦労、家を出るのも一苦労。
なんとか一日を終え、仕事から帰ってきた僕の目に飛び込んできたのは、人の目もはばからずアパートの前で、筋肉野郎に抱きしめられ泣いている彼女だった。
「本当に誤解だよ。でも不安にさせてごめん。それに…痛かっただろ、それ…。」
「ううん。ううん。ユウ君は悪くないよ!私が投げたスマホが、跳ね返っただけだもん…ユウ君のせいじゃないよ!疑ってごめんね。ごめんね。」
ジーザス!!!
開いた口が塞がらない。
モトサヤかよ!
ユウ君の馬鹿野郎。
彼女を返せよ。
「くっそ…なんだよ。」
筋肉ユウ君と彼女がベタベタしながら部屋に戻るのを、路駐車の陰から見送った。
人肌恋しさがいっきに溢れて、思わず口に出る。
「こんなことなら…あのストーカー女でもいいから、付き合えばよかったわ。」
「…いや、無理。あのブスは、やっぱ無理(笑)」
引越しを期に接近禁止命令を取った、悪質ストーカー女の顔を思い出して、背筋がブルっとした。
トボトボと自宅へ近付き、大きなため息をついて、鍵を差し込む。
「あれ?」
どうやら、朝は浮き足立っていて、家の鍵を閉め忘れたようだ。
とりあえず、買ってきたトイレットペーパー、新しい棚に乗っけよう。
メジャーも買ったし、部屋のサイズも測って、本棚も買おうかな~。
そんな事を思いながら、玄関のドアを閉めた。
終わり。
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