チョコよりも甘い世界を、

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チョコよりも甘い世界を、

 二月十四日は、言わずと知れた聖バレンタインデー。  男子は浮つき、女子はメイクに気合が入る。そんな一日。  最早、若者の間で知らない人間はいないんじゃなかろうか。  知らない人間がいるとしたら、それは相当特殊な人間だ。 「・・・ばれん、・・・?」  そう、俺は忘れていたんだ。  俺の愛しい彼女は、相当特殊な人間であることを。 「・・・えと、版画を擦る・・・」 「それは馬連。俺が言ってるのはバレンタイン」 「放射線帯の俗称?」 「それはヴァンアレン帯」 「冗談。ローマの司祭が殉死した日でしょ?」 「ナニソレ?」 「だから、聖バレンタイン・デー」 「女性が男性に思いを伝える日だよ!」 「それは、ただの菓子業界の策略」 「その通りかもしれないけど!」  俺は、ガクッとうなだれた。  うちの彼女はどこまで特殊であれば気がすむんだろう。  そこが好きなんだけども。
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