エピローグ 5年後

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反論しようとするふたりに、 「夏樹、冬依……」 春一はもう一度、静かに静かに名前を呼ぶ。 その声音に、ふたりはハッと我に返った。 「――!」 ゆるゆると春一に視線を戻していく。 そこに立つ春一を見つけて、冬依は、 「ぴゃあっ!」 と姿勢を正し、夏樹は夏樹で、 「見るんじゃねぇ潤」 抱えていた潤の目を塞ぐ。 それから、 「……ごめんなさい春兄」 「すまん、春」 一気におとなしくなった。 「……」 春一は、 「うん」 満足気に笑って、 「じゃあ行こうか、鈴音?」 離れていた鈴音のことを呼んでくれる。 鈴音は、 「あ、……はい」 と言って兄弟たちの方へ向かうが、 「……」 とにかく、笑いをこらえるのが大変だった。 夏樹も冬依も、もう立派な大人のクセして、あの頃とちっとも変わらない。 ケンカするほど仲が良く、それから春一の言うことには絶対服従だ。 こうやっていると、まるで時が戻ったかのような気がする。 4兄弟と鈴音が、わいわいと賑やかに暮らした、あの懐かしい日々に。
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