1 プロポーズ

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安堵感と優越感に舞い上がる春一に、 「だから、春さん。ついて来てくれませんか?」 鈴音はポンと言う。 「ホントはひとりで病院に行くつもりだったんですけど、ちょっと怖くなってきちゃって。でもこっちには親しい友だちもいないし、透子は北海道だし……」 「え?」 降ってわいた話に、固まってしまう春一。 『ついていく? 俺が婦人科に?』 しかし不安げに揺れる鈴音の瞳を見つけて、 「わかった行くよ。俺は鈴音の婚約者なんだし」 すぐに決断した。 鈴音に不安な顔をさせるわけにいかない。 それに、今のうちに慣れておくに越したことはない。 婦人科にはいずれ、何度も通うことになるはずだ。 そういう幸せな未来を想像して、つい頬を緩ませる春一だったが、鈴音に言わなくてはならなかったことを思い出して、慌てて言った。 「あっ鈴音、本当に俺と結婚してくれるのか?」 「え?」 「くれるんだよな?」 すごくマヌケなプロポーズである。 結婚の申し込みというより確認。 ムードもクソもない。 でも確かに、はっきりと言葉にして鈴音に問うのは、これが初めてかもしれない。 婚約者だとか何だとかは散々言ってきたけれど、俺と結婚してくれとは言っていなかった。
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