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2 ブライダルチェック
春一は非常に落ち着かない時間を過ごしていた。
鈴音と一緒にいるときはまだいいのだが、診察室に入ってしまうと、ひとり待合室にいるしかない。
当たり前だが、婦人科の待合室ともなれば、いるのは女性ばかりだ。
耐えきれなくて、病院の外で待っていることにした。
なんのために付いてきたのか、自分でもよくわからない。
ところが、そんな春一の携帯に連絡が入る。
鈴音だ。
「終わったの?」
なかばホッとして尋ねると、不安そうな鈴音の声。
「春さん。お医者さんがお話があるって。一緒に聞いてくれませんか?」
「すぐ行くから」
慌てて、とって返した。
「卵巣嚢腫?」
「ええ、右の卵巣が腫れている状態で、雨山さんの場合すでに7センチの大きさになっています」
すぐにどう、ということはないそうだが、この大きさになると繋がっている卵管が捻れて急激な腹痛に襲われたり、ヘタをすると破裂の危険があるそうだ。
それに何より恐ろしいのは、
「嚢腫は腫瘍でもあるわけですから、ほんの僅かの可能性ですが悪性ということもあります」
そうなれば卵巣ガンだ。
「もちろん採血検査も行いますが、卵巣嚢腫は手術で摘出しないかぎり、細胞検査が行えません。はっきりさせるためにも手術をお薦めします」
大変なことになった。
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