151人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
3 伯母の来訪
――ピポーン――
チャイムが鳴り、その瞬間、来生家の弟たちは、
『しまった!』
という顔になる。
鈴音の入院騒ぎですっかり忘れていたのだが、今日は午後から伯母が訪ねてくる予定だった。
夏樹は椅子をならして立ち上がり、
「テメーら帰ってくんなってラインしただろうが」
ドスの聞いた声で怒鳴るが、どこか小声なのは声が漏れないようにとの配慮か。
ただし伯母はまだ下のエントランスにいるから、声なんか聞こえるわけがない。
そんなことに頭が回らないほど夏樹は慌てている。
春一は苦笑して、インターホンに応えるために席を立った。
夏樹は、今のうちに部屋に引っ込んでいろと秋哉や冬依に合図をする。
でも秋哉は、
「もう遅ぇじゃん。諦めて出迎えて、みんなで待ってましたって言おーぜ」
椅子にもたれかかり頭の上で両腕を組みながら、呑気に伸びをする。
冬依も、
「ボク、伯母さんのことあんまり覚えてないんだ」
かわいらしく小首を傾げている。
最初のコメントを投稿しよう!