ある最先端クリエイター会議の攻防

（１）業界トップが語る「クリエイティブの秘訣」

「おおう！」
たき火の炎で明るく照らされた、今年の新作コンテンツの数々。
抱えきれないほど大きくなったスタイルに、派手な装飾。
さらに、彫り込まれた斬新なイラストに、取り囲んだ一同は驚嘆の声を上げた。

あるイラストは、巨人と虎のチームが、狩りをしながら獲物の数を競っている。
また別のイラストは、うつけ者が巨乳美女に抱きつこうとしてひじ鉄を食らい、タヌキの巣穴に転げ落ちる様子。
村の家々が作る美味しそうな料理と、それを食べ歩く男の姿。
腹を空かした病人に、みんなでドングリを集めて歌いながら寄付する場面。

「さすがは、ニテレさんだ！スポーツ！ちょいエロ！笑い！グルメ！シズル感！そして人間愛の感動！今年の新作もすごいですな！」
会議の参加者一同からの賞賛に、ニテレは余裕の笑顔で応えた。

ニテレは白髪交じりの、ベテラン土器クリエイター。
かつてはライバルのフヒテが、笑いのイラストを中心に新機軸の土器を作り一世を風靡したが、ここ１０年ほどはニテレが全方位的なエンターテインメントを彫り込んで形勢逆転。
サイズはドングリがたっぷり入るよう大きくし、土器の取っ手や口縁部の装飾を力強く突きだし広げる派手にする作風は、老若男女からの人気を集め、業界の王者としてニテレの地位は盤石だった。
ニテレは立ち上がるや、拳を握り声を張り上げた。

「土器というものは、大衆の夢です！
ここには水も、ドングリも、イノシシの肉も 、何でも入れることができます。さらに土器は、火にかければ食べものの調理にも使え、村人の腹を満たすこともできます。
村人に生きる夢を与える素晴らしい土器を、さらに新しく、楽しく、感動的に作り上げること。私たちの創作の魂を土器に託し、村人に喜んでもらうことこそ、私たち土器クリエイターの使命なのです！」