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(3)“欲求”をかきたてるコンテンツとは?
「気がついたかい?いい匂いだろ?見たくなるだろ?ええ?」
ニコドは勝ち誇ったように、土器のフタを空けた。
そこには、ぐつぐつ煮られた柔らかな赤茶色の粒がぎっしりとつまっていた。
匂いにあらがいきれずのぞき込んだクリエイターたちは、それが植物の種らしいとしかわからないのに、妙にそそられた。
「…うまそう」
「…コメ…、じゃな?ウワサには聞いておる」
最年長のエネケが、何かあきらめたかのようにつぶやいた。
「さすがご老人、よくご存じで。じゃあ、この土器と“コメ”のセットが、なにを意味してるのか、おわかりでしょう?」
エネケは、黙り込んだまま答えない。
みなの心をつかんだ“コメ”の見た目と匂い。危険を察したクリエイターのアサピが叫ぶ。
「はん!そんなドングリよりもずっと小さな種が、小さな土器に入ったところで、腹が満たされるはず…」
「満たされるんだよ!これが!」
大声で制するや、ニコドはテキパキと土器の中の“コメ”を葉の皿に載せ、クリエイターたちに配り始めた。
ニテレは、黙ったまま目を閉じている。
その様子に遠慮していたクリエイターたちも、甘い“コメ“の香りに我慢しきれず、ひとり、またひとりと口に入れ始めた。
「…うまい」
ひとりが声にすると、もう止まらない。次々とクリエイターたちは“コメ”をむさぼり始めた。このうまさと腹持ち加減は、ドングリの比ではない。
「どうだい?“コメ”さえあれば、ドングリよりもはるかに効率が良い。この小さな土器一杯で、みんなのお腹が満たされるんだ」
美食で腹が満たされたクリエイターたちが、ニコドの声にうなずこうとしたその時、ニテレの声が響いた。
「それは“コメ”の話だ!土器の良し悪しではない!」
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