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(4)激論!現代クリエイティブの役割とは?
ニテレの目は血走っている。
ニテレ自身、眉太の若い女のユニークな旅の様子を土器に彫って大ヒットを飛ばしただけに、外の村の情報には敏感だ。“コメ”がいかにカロリー豊富で西の“クニ”の暮らしを一変させているか、ウワサは聞いていた。
だからこそ、土器そのものではなく、“コメ”の魅力を土器の魅力にすり替えようとするニコドのやり方が許せなかった。
「若造、お前が語っているのは”コメ”がもたらす豊かさだ。わしらが作り続けてきた大きく美しい土器より、その貧相な土器が、なぜ村を豊かにすると言える?」
ニコドが、待ってましたとばかりにニヤリと笑った。
「あんたたちと似たような土器ね、西の若者たちの間では、もう流行ってないんだよ。
“コメ”をぎっしり入れて、水を入れて火の上に置いてごらん。やたら背を高く作ってるから、バランスが悪くてすぐ倒れちまう。それに装飾がやたら多くて扱いづらいし、素材も高温に耐えられないから、すぐヒビが入っちまう。それにイラストもすぐに刺激的なエロや攻撃的な笑いに走りがちだから、クライアントからは“子どもに見せられない”ってクレームが殺到してるんだぜ」
「土器はただの道具ではない!使う人に夢を持たせるものだ。わしらにはクリエイティビティで人と社会を豊かにするという、使命がある」
「は!クリエイティビティだって?あんたたちの勝手な趣味じゃないか?現代の嗜好が多様化した時代にそんなもの、昔からの権威主義の一方的な押しつけにすぎないってことを自覚しろ!新しい時代は、もうすぐそこまで来てるんだよ!あんたたちはもうオワコンなんだよ!」
この“オワコン”なる聞き慣れない新しい言葉の負の響きが、よくわからないままクリエイターたちの胸をえぐった。
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