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(5)「新しさ」に求める覚悟と夢
ニテレは、村を去った。
行く先々で土器を作りながら、何年もかけて、北へ、北へと向かった。
西国からはるかに離れた北の地では、ニテレの作る土器は依然として喜ばれた。
その作風は、より派手に、より大きく、より華やかになっていった。
土器の縁は凹凸が激しく、まるで天に伸びる枝葉のように広がっていき、実用性からはますます遠ざかっていく。
クリエイターとしての最後の意地が吹き上がり、ニテレは王者と呼ばれた頃よりもはるかに情熱を注ぎ、ますます役に立ちそうもない土器を作り続けた。
北の民はその紅蓮の炎のような土器から、長く重い雪の季節を乗り越える、熱い力強さを受け取った。
年を経て、ニテレは病に倒れた。
土器を作り続けた手も、動かない。
もう長くはなかった。
そんなある日、ニテレは病床でかつてのふるさとの噂を聞いた。
ニコドの新しい土器と“コメ”で、村は一時的に豊かになったらしい。
しかしやがて、より新しく、より効率的な技術を発展させた、西からの勢力にのみこまれてしまったと。
わしが今いる村も、やがてのみこまれるだろう。
わしの土器も、いずれ使う人などいなくなるだろう。
でも、たとえ使われなくなっても、忘れられないような自信が不思議とあった。
後世の人はわしの作品を見て、こんな合理性からかけ離れ使いにくく、やたら派手で大きな土器、いったい何なんだ、と思うだろう。
あっけにとられる、数千年後の人々の顔。
無性に嬉しくなり、ニテレは静かに目を閉じた。
終
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