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いつの間にやら、キッチンに長い影が落ちている。ああ、もうこんな時間だ。
今夜の献立を考えるのが、今日は少しだけ面倒臭い。
ひとまず、米だけは研いで水に浸した。
さて、夕食の支度をするにしても、うちには何があるんだったか。
冷蔵庫の扉を開けてみる。すかすかの冷蔵庫の中に入っていたのは、昨日の特売で買った鶏もも肉。それにしめじ。冷蔵庫脇の野菜カゴには長ネギが刺さっていた。思いのほか、食材がない。はてさて。これはどうしたものか。
それにしても、今日はどうして料理をすることがこんなに億劫なのだろう。レシピ本を開いてみても、どうにもピンと来るものがない。そもそも、食材だってこれしかないのだ。作れるものにも限りがある。かといって、わざわざ買い出しに行ってまで食べたいものがあるわけでもない。
ああ。参ったな。
どうして今日は、こんなにも食への関心が沸かないのだろう。
調理台で開いたレシピ本が、オレンジ色の光に染められている。
……タン。
きつく締めたはずの蛇口から水が零れ、シンクに当たって音を立てた。
仕方がない。今日はもう、あるものだけで適当に作ろう。あの頃の手癖はもう残っていないはず。勘だけで作っても、きっと大丈夫。
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