1. 記憶はどこに宿るのか

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 適当にぶつ切りにした鶏もも肉を炒め表面の色が変わったら、石づきを取りほぐしたしめじと斜め切りの長ネギを加え、これまた適当に炒める。それだけで、鶏としめじの出汁、それに炒めた長ネギの甘い香りが漂ってきて、食欲が刺激された。食べたいものが分からなくとも食欲が無いわけではないらしく、ほっと胸を撫で下ろす。  具材がしんなりしてきたら……。味付けをどうしよう。無難に、醤油とみりんで仕上げるか。  醤油・みりん・酒は、調味料三種の神器だと思う。この三種を入れさえすれば、どんな物でも美味しくなる。水の量を増やして煮物にしたり、逆に煮詰めて甘辛くしたりと、味に幅も付けられる。照り焼きソースだって作ることができる。  分量は……、まあ、目分量でいいか。どうせ、材料の量も適当なんだ。酒、醤油、みりんをそれぞれフライパンにぐるりと一周分注ぎ、フライパンに蓋をする。隙間から漏れる蒸気に、醤油の香ばしさと酒やみりんの甘さが溶けだしていた。
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